お母様とそのご姉妹が 子供の頃に使っていらっしゃったピアノです。
紫緒里ちゃんが そろそろピアノを習い始めるということで、以前からピアノの塗替えに興味を持っていらっしゃったことが具体化して インターネットなどで探していらっしゃいましたが、
その頃 たまたま作ったばかりの当工房のホームページを見ていただき ご連絡くださいました。
まずはお宅を訪問します。
お客様のピアノやお部屋の様子を拝見し、どんな風にリメイクするかというお話を始めます。
お部屋の家具や雑貨、好きなキャラクターや雑誌などから ベースとなる色を決めていきます。
今回の場合、ベースとなる色はお部屋にあった家電製品の色を基準にして、お母様がたまたまその時着ていらっしゃった仕事着である白衣(小児科の先生をしておられ、
肩からかわいいピンクのグラデーションがかかったおしゃれな白衣でした。)の柄を取り入れて、上の方からグラデーションをかけることになりました。
リメイクの内容を具体的に決めます。
何度か打ち合わせを重ね、具体的な色や配色のパターン、細かい部分の仕上げ方などを煮詰めて決めていきます。今回の場合はグラデーションの掛け方
、イスや敷板などとのバランスが微妙だったので、パソコンで大まかな配色パターンの画像を作って(写真)イメージを合わせていきました。同時に塗料のテストピースや
イスの座面の生地サンプルなどをお持ちして 確認していただきます。
ピアノを工房に移動して作業を開始します。
各部を細かくチェックして作業の見通しを立てながら分解に取りかかります。
このピアノは 保管状態も良く、外装の程度はとても良い状態でしたが、お母様と 子供の頃一緒に使っていらっしゃったお姉様は その後音大に行かれるなどで 使用頻度は高かったため
中身の方もこのときまとめて修理と再調整をすることにしました。
塗膜の補修と下地作り
傷などを修理しながら塗装の下地を整え 塗装の準備に入ります。
このピアノは 深い傷や打ち傷はほとんどありませんでしたが もともとの塗膜が肉痩せして 若干 下地の木の模様が浮き出る様な感じになっていたので、もう一度 キレイなフラットの面を出すために下地を調整します。
パーツごとに分解し 各部をクリーニングします。
外装パーツは 分解できる範囲ですべて外し、中にたまったホコリなどはもちろん、パーツの裏側の再塗装や 錆びが出たり 蒸散した防錆・防虫剤が付着した金属類を磨き出します。
写真は 鍵盤を支えるピンを磨いたところです。見えない部分ですが 直接鍵盤のタッチに影響する部分です。1本1本磨くのは地味な作業ですが、サビや湿気、防錆剤などで鍵盤が重くなったのを 定期調律時に応急処置的にケミカルな潤滑剤などを塗って処置してあると
何年か後には それが今度は付着してさらに重くなって また潤滑剤を塗って… という悪循環に陥ってしまうので、こんな時には欠かせない作業です。
マスキングして塗装に取り掛かります。
内部のクリーニングも終わり、各パーツの補修と下地調整が終わったら、色を塗る部分以外をマスキングして塗装に取り掛かります。
今回はグラデーションをかけるので、色を合わせるために 鍵盤の乗る部分(棚板)と それを支える横の部品(腕木)は 再び取付けてから塗装しています。
また、他のパーツも グラデーションのかかり具合を合わせるために 同時進行しています。
全てのパーツを塗装し、よく乾かしてから磨きます。
分解したそれぞれのパーツを全て塗装し、よく乾燥させます。ピアノは大部分が木製で しかも機構の精度や音質に直接関係する繊細な部品の集まりなので
熱を加えて乾燥することが困難です。常温乾燥でじっくり乾かし、完全乾燥後に磨き作業に取り掛かります。高級家具やオーディオなどで使われる いわゆる
『ピアノ塗装』というのはこの磨き作業で決まります。自動車などの塗装は スプレーしたときの凹凸がそのまま残っているのですが、この『ピアノ塗装』では
凹凸をサンドペーパーなどで完全に平滑にしてからバフ掛けして艶を出します。『鏡面塗装』ともいわれています。
ペダル、鍵盤などの磨き作業
塗装を乾燥させている間にペダルや蝶番、鍵盤などの補修、磨き作業に取り掛かります。各部をクリーニングしながら摺動部などに使われるフェルト類を
新しいものに交換します。ピアノの外装に使われている金属はほとんどが真鍮製なので、かなりひどい錆や汚れでも磨いたらぴっかぴかになります。余談ですが、これらの
『光モノ』といい『鏡面塗装』といい、もともとアメ車系カスタムカー好きで 自動車塗装から入ったボクは かなり仕上がりにこだわってしまう部分です。。。
組付け
磨き作業や補修が終わったパーツを順に組み付けます。分解時に錆びて折れてしまったネジは取り除き、外装に使用されているのと同じ堅い木材で埋木してから
新たにネジを切ります。
ネジが折れたままになっていたり ネジ穴が広がって バカネジになっていたりすることもよくあります。定期調律時には なかなかこういう作業は出来ませんが、雑音の原因にもなるので これも欠かせない作業です。
アクションの整備
組付けがほぼ終わった頃、アクションの整備に取り掛かります。動きが悪くなったり グラグラになった回転部分のピンを交換したり、ハンマーを整形したり…
そのピアノの状態や使用目的に合わせて必要な整備をします。写真はこの年代のヤマハの泣き所、劣化してぽろっと切れてしまうフレンジコードを新品に
交換しているところです。
整調・調律と納品準備
アクションを組み付けて 各部の調整をします。納品前に 可能ならばお客様にご来店いただいて確認していただくこともあります。今回はご来店いただいた時に
聞かせていただいたお話から、鍵盤蓋がゆっくり閉まるようになる『フィンガード』を追加注文いただき、同色にペイントして取付けてから納品することになりました。
完成・納品・納品後点検
完成後、各部を最終点検して納品させていただきます。手を入れる部分が多くなると 補修や交換したパーツが馴染むまでに変化する度合いが大きいので
納品時の調律とその後1〜6ヶ月くらいでもう一度点検させていただいています。
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