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リ「メイク」

「リメイクピアノ」という名称は、ピアノを塗り替えるというサービスを始めたときに「リフレッシュ&メイクアップ」の頭文字を組み合わせて無理矢理(笑)つけた名前だということは先日もちらっと書きましたが、「メイクアップ」という意味での基本的なスタンスは、伝統的な装飾ピアノの持つ意味合いとは少し異なるのかもしれません。

もちろん、ライフスタイルやインテリアに合わせてピアノを装飾するという意味合いは共通なのですが、当工房が1番の目的とするのはピアノを使う人が「ピアノに向かう」という動機付けの部分です。

これを説明するのはなかなか難しいのですが、ひとつのたとえ話として、「メイクアップ」に関する興味深い動画がありましたので、ここで引用させていただきたいと思います。

これは良い動画なのでなるべく大きな画面でフルスクリーンで見てもらいたいのですが、癌の治療中の患者さんたちに一瞬でも癌のことを忘れてもらうためのサプライズ・プログラムなのだそうです。

がん患者が大変身! 驚きと喜びの瞬間を捉えた感動的な動画

メイクを施された患者さんが目を開けた瞬間の驚きと歓びの表情で、観ているこちらも自然と笑顔になってしまいます。

この患者さんたちの表情から連想したのは、小さなおんなの子がお母さんの真似をしてお化粧(いたずら?)している光景です。

お化粧1

お化粧2

癌患者さんたちは「癌のことを忘れた」というより「生きているということを思い出した」のかもしれません。

自分自身はファッションやブランドにはとても疎いのですが、テレビでやっているオートクチュールなどのファッションショーの様子を見るのが好きで若い頃からよく見ていたのですが、Vivienne Westwoodさんのショーのモデルさんたちがステージで見せる表情がまた、この表情に近いと感じることがよくありました。

vivienne01

なので、Vivienneさんはきっと「生きているということを思い出す」ことが上手な人なんだと思いますが、

vivienne02

この写真なんか、上の動画を地で行ってる感じがします(笑)

vivianneさんといえば、マルコム・マクラーレンとともにイギリスのパンクの仕掛人みたいな人なので、こういう格好をしても堂に入った風格さえ感じます。

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シド・ヴィシャス(セックス・ピストルズ)とヴィヴィアンさん

素敵な “Dame” ですね。

「リメイクピアノ」の説明のつもりが脱線してしまった気もしますが、ピアノリメイクの「メイクアップ」の部分も、スタイルが先行するのではなく(夢中でお化粧ごっこをするいたずらっ子の様な)心で感じることがまず第1という思いがいつもどこかにあります。

ちなみに、BBピアノの「BB」は「Bad Boy」(いたずらっ子)の意味を含んでいます。

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追記:

参照:Mimi Foundation ”Ne serait-ce qu’une seconde”

ピアノに装飾

リメイクピアノのオプションで、装飾パーツを取り付けることができます。

ここでは、リメイクピアノに装飾パーツを取り入れるきっかけとなったエピソードをご紹介したいと思います。

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ずいぶん前のフランス旅行中、ヴェルサイユ宮殿を訪れる機会がありました。

ヴェルサイユ宮殿といえば絶対王政の最盛期を代表する建物で、「鏡の間」に象徴される様に荘重で豪華絢爛なバロック様式のイメージが強いのですが、

ヴェルサイユ宮殿 鏡の間

ヴェルサイユ宮殿 鏡の間


それに続くロココ様式の発祥の中心でもあったわけで、ポンパドゥール夫人からマリー・アントワネットへと引き継がれた「プチトリアノン」はかねてから是非一度訪れてみたい場所でした。

ちなみに、現在もピアノのデザインで人気の「猫脚」はロココ様式の最大の特徴でもあり、実はマリー・アントワネットとモーツァルトは誕生日が3ヶ月しか違わないのですが、モーツァルトが活躍した時代はちょうどピアノの原型が形成される頃でもあるので、ピアノとロココの関わりは意外とその源が近いところにあるのではないかと想像します。

プチトリアノンの中は至る所に豪華さと女性的な優しさを兼ね備えた装飾が施してあり、

プチトリアノンの装飾

プチトリアノン アントワネットの部屋(?)

プチトリアノン アントワネットの部屋(?)

これは何とかピアノにも取り入れられないかと帰国後いろいろ探しているうちに、装飾用の建築部材から流用することを思いつきました。

早速サンプルを取り寄せて、リメイクしたピアノと質感が合う様に加工して塗装をしてみました。

装飾パーツ 下地調整

装飾パーツ 塗装

これをリメイクしたピアノに取り付けてみるとなかなか良い感じで、工房でこのピアノを見た人たちからもとても評判が良かったので、この後さっそくサービスのひとつとして取り入れることに決定しました。

ピアノに装飾パーツを取り付け

記念すべき装飾第1号のこのピアノには、プチトリアノンの広い庭園の池のほとりにある、ロココの語源ともなっている”洞窟”を抜けたところに建っているベルヴェデール(=見晴らしの良い小さな建物という様な意味 …後で知ったのですが、ここは別名「音楽のサロン(Salon de Musique)」といううってつけの名で呼ばれているのだそうです。)のすぐ近くでこのときに摘んで来た「四葉のクローバー」を記念品としてプレゼントさせていただきました。

プチトリアノン ベルヴェデール

ベルヴェデールの四葉のクローバー

 

ピアノにイラスト

ピアノリメイクの追加オプションとして、ピアノにイラストを入れることが出来ます。

ここでは、以前手がけたピアノの中でも大掛かりなイラストを施したピアノの例をご紹介させていただきます。

ピアノにイラスト

お客様はベテランのピアノの先生ですが、お引っ越しをされて新たにピアノ教室を始められるということで、その際にピアノのリメイクを考えていらっしゃいました。

教室となる建物を前もって見学させていただきましたが、元々は和風のブティックの店舗だったそうで、格子戸や表しになった天井の太い梁などが特徴的な、和モダンのインテリアでした。

仕上がりはほとんどこちらにお任せいただきました。
ピアノのデザインに和風の要素を取り入れるということで少し悩みましたが、ちょうどこの数年前に行ったフランス旅行で、地方の電車の中で見かけた日本の古い女物のキモノを羽織ったフランス人の少年の自然で粋な格好の良さに衝撃を受けていたこともあって、着物の様な和柄を大胆に取り入れてみたくなり、また、先生ご自身も和太鼓など少し異色な楽器演奏者さんたちとコラボレートする様なバンド活動をされているということなどもお伺いしていた事もヒントにして、ラフなスケッチを描いて大まかなイメージを打ち合わせした後は出来てからのお楽しみという感じで作業を進めさせていただきました。

元々の黒も生かしつつ、各パーツを組み立てたときにデザイン全体に流れと一体感が出る様にイメージしながら細部のデザインを組み立てるという作業は、難しいけれどとても楽しい作業でした。

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イラストや模様はエアブラシを使って描いています。

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柄部分の塗料は日本画に使う岩絵具の様な色をイメージしています。背景部分は上質な絹の様に滑らかな艶やかさを表現出来ればと思い、黒い部分はより透明感が出る様にして、また、柄の左右の白っぽい線や塗りつぶしの部分はパールやメタリックなど、近くで見るとキラキラ光る素材の塗料を使っています。

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完成したピアノを工房で見ていると少しデザインし過ぎたかなと思うほどインパクトが強烈だったので少し焦りましたが、実際に教室に納品させていただくと、周りのインテリアの中でそれほど奇を衒った感じもせず馴染んで、その後生徒さんや親御さん方にもたいへん評判が良いということで、ホッとひと安心です。

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このピアノがある教室をご紹介させていただきます。

Wald ist musik
中川淳絵 音楽教室

 富山県砺波市林945-1
 0763-33-5836

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