譜面台ヒンジ

多くのアップライトピアノの鍵盤蓋についている折りたたみの譜面台は、何十年も使っているうちに折りたたみ部分のヒンジが緩くなってきて、鍵盤蓋を締めるとカチッといって譜面台が鍵盤に干渉するということがよくあります。

その場合はヒンジそのものを交換するか、ヒンジの芯棒を少し曲げて抵抗を増やして開きにくくするなどの処置をしますが、ヒンジそのものの部品代はそれほど高いものではないし手間もかからないので、調律などの現場でも交換する場合が多いです。

先日クリーニングでお預かりしたピアノの分解をしていると、ヒンジそのものはそれほど傷んでいないのに取り付けが妙にガタガタなのがあったのでヒンジを外して確認してみると・・・

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譜面台は樹脂のものが多く、直接ネジ山を切ってあるのでなく樹脂に金属のナットが埋め込んであって、細目の皿子ねじで締め付けてあります。

ここに使われていたのは、木ネジ。

1本は長さが合わなかったらしく、わざわざ余分なところを切ってあります。

ネジが在庫切れだったとしても、元々のを使えば良かったのに・・・(笑)

最近読んだ本の中で、「現在失われつつある”職人魂”(職人のこだわり)というのは、もともと社会の中で関係の質的なガイドラインというか”良心”の役割を果たしていた…」という様な内容があってとても感銘を受けましたが、大量消費に合わせた悪い意味での品質管理が基準になりつつある現在の流通社会の中で、脚下照顧。

KL11-KF 純白鏡面/クロームメッキ仕様

今回は、当工房のメイン業務であるにも関わらずご紹介の少ない(笑)リメイクピアノのご紹介です。

当工房でももっとも人気のある猫足コンソールタイプのピアノですが、今回はお客様のおうちのインテリアに合わせて、塗装を鏡面つや出し仕上げ+金属部品をゴールド→シルバーへの変更というめずらしい仕上げにしましたのでご紹介します。

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元々この機種に施されている塗装はセミ・オープン・ポアといって、木の質感をある程度残したままの表現するために、木の表面の導管(木が水を吸い上げる細い管)を埋めずに仕上げされています。

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鏡面つや出しに仕上げる場合は、一度その導管を埋めてしまってから上塗りの塗料を吹き付け、その後鏡面に研磨します。

また、ペダルなどのピアノの外観にある金属部品は、この機種の場合アンティーク感を出すために真鍮製のパーツの上から燻した様な風合いの塗装が施されています。

木目からホワイトやピンクに塗り替える場合には、一度その塗装を剥離して磨き直すと真鍮の金色の鏡面仕上げになるのですが、今回はインテリアに合わせてゴールドではなくシルバーでというご要望でしたので、真鍮の上から装飾メッキを施すことになりました。

外装の金属部品は、目立つところではペダルや鍵盤蓋のヒンジなどがありますが、実は細かい部分まで見ると意外と数は多いのですが、全体の質感を保つためにはやはりすべて統一した方がよいので、細かい部分までメッキを施してあります。

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加工前のペダル

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メッキしたペダル

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組み上がるとこうなります。

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目立つ部品としては、鍵盤蓋のヒンジや飾りつまみも。

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譜面台を支える小さな部品もぬかりなく。

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猫脚の先端のキャスター。

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少しだけ見える鍵盤押さえのヒンジ。

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屋根を支える支柱もこのタイプのチャームポイントです。

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外から見るとこれだけの部品も・・・

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部品全体ではこれだけになります。

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イスの脚の先端の飾り部品も、ペダルやキャスターとの統一感で大切なアクセントになります。

【番外編】真空脱泡機 試作

今回の内容は、直接ピアノの整備には関係ないのですが、番外編としてご紹介してみます。

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最近、入手の困難な部品などを、樹脂を使って復製することをいろいろ試してみています。

型や樹脂は、最近ではいろいろなタイプのものがあって、入手することも容易なので、そういう意味でもいろいろと試してみたいと思っているのですが、作業の中で、型や製品の元となる液体を流し込んで固めるときに、泡が入って中が空洞になるのを防ぐための工夫を考えていました。

いろいろと調べているうちに、その様な作業では「真空脱泡機」なるもので液体から泡を抜くということが分かったので、その原理を簡易的に真似出来る様なものを作ってみました。

真空というよりもそこそこ負圧がかかればある程度泡を抜くことができるかな?ということで、本当に簡易的なものです。

真空ポンプは無いので、いつもはほとんど使う機会のない小型のコンプレッサー(1馬力)の吸気の負圧を利用します。

吸気側のエアクリーナーを外して、そこにカプラーを取り付けます。

負圧をかける空間用のケースは、とりあえず大きさ的にぴったりだったので、その辺にあった樹脂製のコンテナを利用することにします。

コンテナに穴を開けて、そこにもカプラーを取り付けます。

コンテナの開口部分の周囲に、ドアの戸当たりテープを貼って密着性を高めます。

コンプレッサーとコンテナをエアホースで繋いで準備完了です。

さっそく型に樹脂を流し込んで使用してみました。

これでもし足りなかったら、通常使用している大きなコンプレッサーで試してみようと思っていましたが、ケースが凹むくらい負圧がかかる様で、なかなか良い感触です。

出来上がったものを試しに中の方まで削ってみましたが、気泡は完全に取りきれてはいなかったものの、これを使用せずに流したものと比べると明らかに良い状態でした。

作業手順などをもう少し見直せば、この方法でもなかなか良い状態のものが作れそうです。

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<もし記事を参考されることがあれば…>
・コンプレッサーはドレインを解放したまま手動で動かしています。
・コンプレッサーの操作は手動なので、そのまま動かし続けるとコンテナかコンプレッサーが壊れますのでほどほどに(笑)