カテゴリー別アーカイブ: ピアノ修理

ピアノ修理(ダンパーレバークロス貼り換え)

ピアノの修理についてご紹介します。

鍵盤を押さえたままのときや、右側のペダルを踏んでいるときにはピアノの音は鳴ったままになりますが、それ以外のときには音がとまります。

ピアノはハンマーが弦を叩いて音を出しますが、その弦はそのままだと振動が徐々に無くなるまでゆっくりと減衰しながら鳴り続けます。

その状態で曲を弾くと、たくさんの音が混じって汚い音になるので、不要な音はその都度止める必要がありますが、その役割をしているのがダンパーです。

アクションを裏側から眺めると、小さなフェルトがたくさん並んでいる部品がそれです。

ダンパーはダンパーレバーに取り付けられていて、鍵盤を押したときとペダルを踏んだときにテコの原理で動く仕組みになっています。

鍵盤を押したときは、1つ1つのアクションが動くと、その後ろに取り付けられているスプーンという耳かきの様な部品がレバーを押して動かす仕組みになっています。

スプーンは金属製、レバーは木製で、摺動面にはフェルト(ダンパーレバークロス)が貼ってあり摩擦を吸収しています。

湿気などでスプーンの表面が錆びるとその表面がギザギザのヤスリの様になって、ピアノを弾けば弾くほど相対する部分のフェルトをヤスリがけしていることになり、フェルトはスプーンの形に削れていってしまいます。

こうなると、鍵盤を押さえるたびに、削れた穴からスプーンが脱出するための余計な力が必要になり、鍵盤が重くなったり、スプーンが途中で引っかかってうまく動かなくなったりします。

この様な場合には、フェルト(ダンパーレバークロス)を新しいものに貼り直して、それと同時にスプーンについた錆を落として表面をつるつるに磨き直します。


(右側が磨いた後)

また、ペダルを踏んだときすべてのダンパーを同時に動かすための、ダンパーロッドという部品も同様に作業します。

※ピアノの部品で「クロス」は「フェルト」の中に繊維が入ったものを指します。

ピアノ修理(スティック→センターピン交換)

ピアノの修理についてご紹介します。

こちら(北陸)では特によく見かけますが、湿気の影響でピアノのアクションの回転部分の動きが悪くなって、動きにくくなったり重くなったり音が出なくなったりする場合の修理です。

弦を叩くハンマーが取り付けてある根元の部分が「バット」、それをアクション全体のセンターレールに取り付けているのが「フレンジ」で、それらは木製あるいは樹脂製ですが、固定されたフレンジと円運動をするバットの間には金属の軸(センターピン)を介して動く様になっています。

また、金属と木または樹脂が直接摩擦しない様、その間にはフェルトを挟んで軸受けにしてあります。

湿気が多い状態が長く続くとそのフェルトが水分を含みます。

水分を含んだ状態ではフェルトが膨張していますので、もちろん回転の抵抗の直接の原因になりますが、それが乾燥しても湿気がフェルトの表面を劣化させて粘り気が出て抵抗になったり、また、金属のピン自体も錆びて抵抗になったりします。

動きの悪くなったセンターピンを外し、フェルトの表面を専用の工具で削り取って、フェルトとの回転抵抗を確認しながらフェルトを削った分だけもともとのものより若干オーバーサイズの新しいセンターピンを挿し込み、両端を切って交換終了です。

再びアクションに取り付けて、弦とハンマーの位置を調整し動きを確認します。

ピアノ内部にはこの様なセンターピンを介する回転部分が他にも数カ所あり、それぞれが鍵盤の数の分(88本)あります。

ピアノの外装修理(エンブレム周りのひび)

ピアノの外装の修理についてご紹介しています。

今回は、古いピアノによくあるのですが、鍵盤蓋の裏側の、メーカー名が入ったエンブレム周りにひびが入ったものの修理です。

金色のエンブレムは真鍮製で、周りの塗装に対して素材が違っているので、その隙間から劣化が進んで文字の周りにひびが入りやすくなる様です。

ひびはほとんどの場合、素材(木)のすぐ上の下塗りから発生している様ですので、その下塗りを除去して塗り直さなければいずれまた同様にひびが発生します。

新品の制作過程では、真鍮のエンブレム自体に元々若干厚みの余裕があって、塗装を磨く行程ではみ出したエンブレムを削りながら面出しして仕上げるのではないかと想像しますが、補修の場合はそれは出来ないので、面倒ですがエンブレムを一度外して下塗りをした後で塗膜の厚み分を予め浮き上がらせて再度埋め込んでいます。

残念ながら、このときには仕上げ後の画像を取り忘れていましたが、エンブレム周りに限らずとも、2本ペダルくらいの年代のピアノはこの様な症状があちこちに現れる場合が少なくありません。

塗装のひび割れの修理は、上記の様に下地からやり直す必要があるので、通常の塗装修理よりも割高になっています。